ハタラキアリの徒然日記

働く中で気づいたことについて書くブログです。仕事での「気づき」やビジネス書の書評などを書いています。

残業削減のトリレンマ|サイボウズの広告

サイボウズの広告がまた話題になっているようです。

短い残業時間・企業の成長・給与水準の維持の3つを同時に達成するためには、ITが必要です。

サイボウズ・キントーンの広告

togetter.com

「ノー残業、楽勝! 予算達成しなくていいならね。」

「さようなら深夜残業。こんにちは早朝出勤。(苦笑)」

「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん・・・ ふぅ・・・(ため息)」

という煽り文句の入った広告が話題になっています。

そのうえで、自社製品のキントーンの宣伝がされています。

ルールだけでなく、ツールで新しい働き方を

サイボウズがどこまで考えてこの広告を作っているのかはわかりませんが、実は非常に的を射た主張なのです。

残業削減のトリレンマ

ジレンマとは、2つを同時に達成することはできないという状態です。

トリレンマとは、3つを同時に達成することはできないという状態です。

残業時間の削減に関連して、次の3つを同時には満たせないというトリレンマがあります。

  • 短い残業時間
  • 企業の成長
  • 給与水準の維持*1

企業の成長を成する場合

もちろん、現状維持=目標未達になりますから、企業を成長させるためには総労働量を増加させる圧力があります。

総労働量の増加とは、次のうちどちらかによって行われます。

  • 1人あたりの労働量を増加させる
  • 人員を増やす

前者の場合は「短い労働時間」が達成できません。生産性を上昇させればよいと考える方もいらっしゃると思いますが、一般的には「生産性向上のための努力」も労働とみなされているので、残業時間は長くなってしまいます。*2

後者を選ぶと「給与水準の維持」ができません。人員が多くなると情報共有や人事のコストが増えますから、1人あたりの人件費のうち給与として支払える割合が減ってしまうのです。

企業を成長させない場合

企業の成長を前提としなければ、労働時間を減らして給与水準を維持することができます。

ただし、業績を停滞させ続けると資金が枯渇していきますから*3、持続可能な状態ではありません。いわゆる「焼畑農業」に近い状態となります。

トリレンマの解消

残業時間が短いうえに、企業を成長させ、給与水準が高いという企業はほとんどありません。

f:id:ndel:20170514144652p:plain

企業の成長をあきらめた例には、東芝やシャープがあります。東芝は残業がほとんどないことで有名な企業であり、その割に高い給与水準でした。しかし、その状態では「ヒト」が育たず、最後は経営に失敗して今に至っています。

残業時間をあきらめた例には、証券業界全般があてはまります。金融危機の前後以外では常に安定的に成長しており、給与水準も高い状態です。しかし、その代償としてきわめて長い労働時間が課せられています。

給与水準をあきらめた例には、スタートアップ企業全般があてはまります。初期メンバーはストックオプションをもらって全力で仕事をし、企業を成長に導きます。しかし、ある程度大きくなってくると労働時間の減少と安定成長とともに、高額な報酬はなくなります。

トリレンマに直面していない企業

しかし、トップクラスのIT企業は、このトリレンマに直面していません。

f:id:ndel:20170514144743p:plain

Googleやfacebookに代表されるトップIT企業は、目を見張るスピードで成長しつつも、労働時間は長くなく、そのうえきわめて高い報酬水準で人員を獲得しています。

これができる理由は2点あります。

  • 製品開発につながらない仕事が少ない
  • 仕事の自動化・効率化が進んでいる

まず、Googleやfacebookのようなビジネスは、いわゆる広告や営業があまり必要ではありません。

ウェブサービスなのでウェブを使える人だけが対象になっており、したがって広告もウェブで完結できます。営業についても、製品の優位性があるのでそれほど熱心に行わずとも顧客を獲得できます。

このため、予算の大部分を製品の開発にあたるエンジニアやプログラマに割くことができます。

また、仕事の自動化や効率化が進んでいることも1つの特徴です。

ITリテラシーの高い従業員ばかりなので、よいツールであれば新しいツールを導入してもすぐに活用されます。ITリテラシーの低い社員がいる企業だと、これはなかなかかないません。

トリレンマを解消するためには?

結局、無駄な仕事を減らすか仕事を自動化するかしかありません。

したがって、「ルールだけでなく、ツールで新しい働き方を」というサイボウズの主張は非常に正しいといえます。

ただ、ツールとしてサイボウズの製品が適しているのかは知りません。

*1:ここでいう給与水準とは、いわゆる時給の水準であって年収のことではありません。

*2:生産性が高いから労働時間が短いと主張する人たちは、基本的に努力を労働だとは思っていません。ただ、こういった考え方の人はビジネスパーソン全体でみれば少数派でしょう。

*3:業績が停滞・衰退している場合は、銀行などからお金を借りにくくなり、投資家からもお金を集めにくくなります。業績が停滞しているので利益を使ってお金を集めることも比較的難しくなります。