ハタラキアリの徒然日記

働く中で気づいたことについて書くブログです。仕事での「気づき」やビジネス書の書評などを書いています。

受動喫煙と屋内禁煙についての考察|公害と税金・医療費

いま話題になっている受動喫煙ですが、実は、論点は限られているように思えます。

私のポジション

この手の問題はポジショントークになりやすいので、私がどういった立場かを明らかにする必要があるでしょう。

  • タバコは吸いません。セットで語られがちなアルコール・ギャンブル・風俗とはいずれも無縁です。

  • 呼吸器に軽い持病を持っています。*1

  • 父親がヘビースモーカーです。

受動喫煙問題の定義

感情論になりやすいので、まずは機械的に定義をしておきましょう。

  • 副流煙によって非喫煙者が受ける肉体的・精神的な被害のこと。

  • 明確に喫煙が許可された場所以外で起こるもの。

  • 被害者は一般的な成人男女であると想定する。(乳幼児や妊婦などは別の問題とする。)

まず、1つ目について、肉体的・精神的な健康被害が起こったときに限定します。肉体的被害が立証できず、精神的にも気にしていない場合、被害は生じていないものとします。

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2つ目については、「禁止されていない場所」ではなく「許可されている場所」を喫煙可能ととらえます。副流煙被害が最も多いのが自宅*2なので、自宅を含むほうで定義しました。

しがたって、喫煙席しか空いてない場合に喫煙席に座ったとしたら、そこで吸う副流煙は被害ではないということになります。

3つ目は問題をシンプルにするためのものです。妊婦や乳幼児が保護されるべきという考えは、受動喫煙問題とは独立に語られるべきなので除外します。

受動喫煙問題の論点

よくある論点は次のとおりです。

この3つですべてというわけではありませんが、この3点が解決すれば、おおよそ結論が出るのではないかと思います。

  • 喫煙は権利かどうかという話

  • タバコは公害なのかという話

  • タバコ税と医療費の話

喫煙は権利なのか

「喫煙は権利である」と「副流煙を吸いたくないのは権利である」という2つの主張がぶつかっています。

こういう基本的な問題は「権利」を定義するだけで解決できることが多いです。結論から言うと権利ではありません。

㋐ある利益を主張し、これを享受することのできる資格。社会的・道徳的正当性に裏づけられ、法律によって一定の主体、特に人に賦与される資格。法的正当性。 「生きる-」 「 -をおかす」

㋑何らかの原理や存在によって一定の主体に賦与される、ある行為をなし、またはなさぬことができる能力・資格。 ↔ 義務

三省堂「大辞林 第三版」

喫煙は「法律などによって賦与される資格」でない一方で、権利ではないから禁止していいとも自信を持っては言えません。

しかし、詳しく調べてみると、次の3点ほどに集約されるようです。最高裁でも争われたことがあります。

  • 喫煙の自由はあるが、これは権利ではない。

  • 喫煙の自由は保障しなくてもよい(制限されうる)。

  • 上記2点は、たばこ被害がいまほど認識されていない時期のものであり、規制は強化される方向にある。

タバコは公害なのか

こういう主張をされる方も多くいらっしゃいます。

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これも定義を確認したらあっさり決着がつきました。結論から言うと公害です。

事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる(1)大気の汚染、(2)水質の汚濁、(3)土壌の汚染、(4)騒音、(5)振動、(6)地盤の沈下及び(7)悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること

総務省 公害等調整委員会

副流煙は「大気の汚染・悪臭」を引き起こしますし、「健康又は生活環境に係る被害が生ずる」と言えるでしょう。

一方で「相当範囲にわたる」のかどうかと、健康被害を立証できるのかどうかが懐疑的です。

実は、総務省のページにご丁寧にも補足事項があります。

ある程度の広がりがあれば、被害者が1人の場合でもこの制度の対象となります。

また、被害は、既に発生しているもののほか、将来発生するおそれのあるものも含まれます。

総務省 公害等調整委員会

ここまで含めれば、副流煙を公害と呼んでも問題はないでしょう。

タバコ税と医療費

3つ目の論点です。この論点が非常に複雑で難しくなっています。

よくある主張は次のとおりです。

  • 迷惑かけるぶん税金(たばこ税)を払っているのだから許容してくれ

  • たばこ被害によって生じる医療費がたばこ税の税収を上回っている

さらに、ここには隠れた論点があります。

  • 喫煙者には低所得者が多く、所得税や消費税を含めると非喫煙者のほうが多くの税金を支払っている。特に、健康な非喫煙者は医療費の支出も少ない。

3つ目は事実なのですが、ひとまず独立した問題と考えておきましょう。*3

前半2つの主張にはすれ違いがあり、議論が難しくなっています。整理してみましょう。

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喫煙者側には

  • 仮に実質的な税収 *4 がマイナスだったとき、喫煙が制限されたり大幅な増税が行われることに対して納得できるのか。

非喫煙者側には

  • 仮に医療費を上回る税収などがあった場合に、公害を許容できるのかどうか。

という論点があります。それぞれの場合で納得感があるのであれば、税収支や経済効果はあとから算出すればよいでしょう。

税金・罰金での対処が妥協点ではないか

税金を払っても公害が許されないとしたら、問答無用で禁止すればよいだけです。

しかし、現実にそうはなっていない以上は、罰金(税金)があれば公害も多少許されるということでしょう。事実として、過去の公害も基本的には賠償金を支払うことで収拾させています。

個人的には、これを前提に妥協点を見つける、すなわち「適切な課税」を行うのが妥協点だと考えています。

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要するに、たばこ関連の医療費をより正確に推計したうえで、それを十分に上回る額のたばこ税を課せば十分だということになります。

税金の回収の仕方はたばこ税以外にもさまざま考えられます。喫煙所税なるものを導入して喫煙に課税しても構いませんし、歩きたばこやポイ捨てを刑事罰化 *5 して取り締まりを強化し、罰金額を引き上げてもよいと思います。

シンガポールのように、たばこのポイ捨てに100万円以上の罰金を科すべきだとは思いませんが、自動車のスピード違反程度の取り締まり・罰金額より厳しい程度でも良いと思います。*6

受動喫煙によって肺がんになったらたまったものではありませんが、そのリスクに見合ったリターンがあるのであればやむをえません。

世の中はリスクとリターンで動いているのです。

*1:慢性副鼻腔炎です。喘息のようなものです。軽い症状なので、よほど空気が汚いところでなければ生活には一切影響がありません。

*2:副流煙の被害が最も多いのは、夫婦のうち一方が喫煙者で他方が非喫煙者である場合だといわれています。喫煙場所は自宅に限った話ではないと思いますが。

*3:所得税よりはだいぶん少ない額ですが、低所得者のほうが宝くじを多く消費するので税金を払っている量が多いなど、こういった情報を含めるときりがありません。

*4:もしくは、たばこや医療費にまつわる波及効果と考えてもよいでしょう。たばこの消費は、医療費としての財政出動を促しますから乗数効果があります。一方で、健康であることによってレジャー施設が利用されやすくなったり、喫煙者がたばこ以外の財・サービスを消費するようになることでの経済効果があります。これらを考慮した波及効果は、算出が困難な一方で単純な税収支よりも意義のある値となります。

*5:現在は行政処分です。取り締まりの権限は警察ではなく役所にあり、前科もつきません。

*6:受動喫煙の年間死者数は、交通事故の年間死者数の約4倍だそうです。